• Jolij, J., & Lamme, V. A. F. (2005). Repression of unconscious information by conscious processing: Evidence from affective blindsight induced by transcranial magnetic stimulation. PNAS, 102, 10747-10751.

・顔の表情に対するblindsightは,“affective blindsight” として知られる (De Gelder et al., 1999; Morris et al., 2001; Pegna et al., 2005).
健常被験者のV1にTMSを施行することでaffective blindsightを誘発する.
Experiment
4つの顔アイコン (emoticon) を呈示.うち3つはneutral(口が一文字),残り1つはhappy(口角が上がってる)またはsad(口角が下がってる).課題は1個だけ異なるemoticonの表情に対するspeeded-responseの後,その位置を答える(左右2AFCでタイムプレッシャーなし).フィードバックは表情弁別に対してのみ与えられる.
140mm円形コイルを装備したMagStim200で最大出力の90 % でsingle-pulse TMSを施行.コイル下縁をinion ~ 1.5cm上方.Emoticon呈示は16.7/33.3msで,TMSまでのSOAは20msステップで50-290ms.
・110ms-SOAではlocalizationタスクのパフォーマンスはチャンスだが,emoticon discriminationタスクのパフォーマンスはチャンスレベルを有意に上回った.
・110-130msでlocalizeに失敗した試行のみ取り出して分析しても,110mにおいてのみemoticon discriminationはチャンスレベルを有意に上回った.
・前半6ブロックではaffective blindsightが認められたが,視認性が向上した(ベースラインが向上,110msあたりではしっかりと落ち込んでる)後半6ブロックではaffective blindsightが認められなかった.さらに,emoticonを2フレーム (33.3ms) 呈示するとaffective blindsightが認められなかった.
TMS-induce affective blindsightは,全体的に刺激についてuncertainな状態でないと観察されない.
・decision critierionのシフトではない.emoticonタスクに対してのみフィードバックがあって,primary taskだったからではない(localizationにフィードバックを与えてprimary taskにし,emoticonタスクにフィードバックを与えなくてもaffective blindsightは生じる).口角に対する “curvature blindsight” ではない(non-faceにするとblindsightは消失).
Discussion
・affective blindsightはamygdalaへの皮質下経路によって生じるのであろう.意識的同定に必要なV1→temporal cortexのventral pathwayと平行して,この皮質下経路は行動に関連した見えない刺激の処理を行っている.
・刺激が見えずにどのように反応すればいいのか分からない時にのみaffective blindsightが生じたことから,意識的知覚は無意識的に処理された情報へのアクセスに影響する.affective primingの研究結果(affective primeが見えるとpriming方向が逆転する)によっても支持される.
※意識的知覚(V1やfusiform face area)に基づいて行動している時には,無意識的情報へのアクセスはブロックされる.意識的情報がsparseだと,無意識的情報も組み込んでパフォーマンスを最大限にする.
・まるでフロイト的な意識による無意識の『抑圧 (repression)』である.
<コメント>
affective blindsightがemoticon-TMS SOAが110msの時しか生じないのはなぜ?ま,110msがだいたいlocalization(つまりはvisibility)の底だからかもしれないが,130msだってたいがい見えてないんだけどね.


  • Antal, A., Temme, J., Nitsche, M. A., Varga, E. T., Lang, N., & Paulus, W. (2005). Altered motion perception in migraineurs: Evidence for interictal cortical hyperexcitability. Cephalalgia, 25, 788-794.

・migraineur(偏頭痛患者)では,発作間欠期 (interictal period) に特に視覚野における興奮性が変容していると言われている.ただ,hyperexcitableという研究もあればhypoexcitableという研究もある.
・migraineurではV5-TMSによるmoving PTが低いことからV5もhyperexcitableであると言われている (Battelli et al., 2002).しかし,low-frequency rTMSでV1の興奮性を低下させてやるとV5-TMSによるmoving PTが高くなる (Antal et al., 2003) ことから,migraineurにおける低いmoving PTはV1のhyperexcitabilityを反映しているだけかもしれない.
・McKendrick and Badcock (2004) は,migraineurはノイズを含むcoherent motion detection課題のパフォーマンスがhealthy controlよりも低いことを示し,hyperexcitabilityのせいで上昇した神経ノイズが課題遂行に干渉したと提案した.ただし,migraineurは全般的にhypoexcitableなだけかもしれない.
・Antal et al. (2004) では,tDCSを用いて,anodal stimulationによるV5の興奮性上昇によってノイズ無しのcoherent motionタスクのパフォーマンスが向上し,ノイズありのcoherent motion検出閾値が変化しなかった(高くなる傾向)のに対して,cathodal stimulationによるV5の興奮性低下によってノイズ無しのcoherent motionタスクのパフォーマンスが低下し,ノイズありのcoherent motion検出閾値が低下した(パフォーマンス向上).
McKendrick and Badcock (2004) で認められたmigraineurにおけるパフォーマンス低下が,cortical hyperexcitabilityによるノイズ増大によるのか,それともhypoexcitabilityによる全般的知覚阻害によるのかを調べるのが目的.
Experiment
migraineurとhealthy controlそれぞれ20名ずつ.migraineurの内訳は,migraine with aura (MA) が11名,migraine without aura (MoA) が9名.
・ノイズありのcoherent motion検出閾値は,control < MA≒MoAであり,migraineurの方がパフォーマンスが低い.
・ノイズなしのcoherent motion方向弁別課題の正答率は,control < MA≒MoAであり,migraineurの方がパフォーマンスが高い.
Discussion
※V5へのanodal stimulation後のパターン (Antal et al., 2004) に類似していることから,migraineurでは少なくとも発作間欠期には皮質がhyperexcitableな状態にある.
・少なくとも本研究ではMAとMoAで差が認められなかったが,Ssが若かったせいもあるかもしれない.またpsychophysicsのデータとclinical parameter(病歴,発作の頻度,発作の持続時間)に相関は認められなかったが,これについてもさらに調べる必要がある.
<コメント>
今回の結果だけでは,migraineurにおいてV5もhyperexcitableなのかどうかという問題 (Battelli et al., 2002; Antal et al., 2003) には答えられていない気がする.ま,ほぼV5もそうなのだろうけど.