• Sack, A., Kohler, A., Linden, D. E. J., Goebel, R., & Muckli, L. (in press). The temporal characteristics of motion processing in hMT/V5+: Combining fMRI and neuronavigated TMS. Neuroimage.

・coherent motionの運動方向弁別課題に関するV5をターゲットとしたsingle-pulse TMS研究では,Beckers and Hömberg (1992) は刺激オンセット後−10〜+10msのタイムウィンドウで運動知覚阻害を示したが,Hotson et al. (1994) では刺激オンセット後100-150msのタイムウィンドウで運動知覚阻害を示した.Beckers and Zeki (1995) は早いタイムウィンドウでの運動知覚阻害を再現し,経路の違い(視床からの直接投射かV1を介した投射か)で説明した.
・別の解釈として,異なる脳領域が刺激されていた可能性がある(頭皮上でinionからの距離だけを頼りに部位を同定しているため).
→activation mapに基づいて被験者ごとにV5を正確に同定し,広範囲のSOAでデータを取得し,先行研究で認められたタイミングの違いについて検討.
Experiment
outward radial motionとstationary dotsを対比してV5を同定.コントロール部位は各個人のV5から4cm上方.54mmの8の字コイルを装備したMedtronic-Dantex MagPro(最大出力2T)でbiphasicのsingle-pulse TMS.ハンドルはocciputに向けて水平.強度は最大出力の70%.ランダムドット運動は50ms(100Hzで5frames)呈示.0.15°の白色ドット100個からなり,うちの一部がフレーム毎に選ばれて水平あるいは垂直方向に9.0°/sでシフト.水平方向と垂直方向はブロック化,タスクは運動方向弁別 (2AFC).−50〜+200msの10msステップ24水準のSOAでテスト(50-70msはTMS効果が予想されないので除外).
・hierarchical log-linear分析というのを使ってる(よく分からん).
−40〜−30msと130〜150msの2つのタイムウィンドウでコントロール条件と比較してV5条件で運動方向弁別パフォーマンスが阻害された.
Discussion
・V5位置に個人差があり (Watson et al., 1993),moving phospheneを生じない人がおり (Pascual-Leone & Walsh, 2001),moving phospheneはV5以外を刺激しても生じ (Fernandez et al., 2002),V5近傍には運動に関連する領域KOがある (Orban et al., 1995) ため,activation mapに基づいたコイル位置の決定は重要.
−40〜−30msでのパフォーマンス低下はV5に特異的なnonneuronal effect,おそらくblinkだろう(つまりコントロールよりもmuscle twitchが生じやすかった).
130-150msで認められたパフォーマンス低下はHotson et al. (1994) に一致する.また,fMRI-guided MEGでV5の運動刺激に対するオンセット潜時が130ms(ピークが150-180ms)という知見 (Ahlfors et al., 1999) にも一致.
・Beckersらのグループの結果については,刺激の速度なども関係するかもしれないが,はっきりいって不明.
・KOやV3Aなんかも関係してくるかもしれない.
<コメント>
とりあえずはBeckersらは怪しいということで.100-150msくらいがV5-TMSによる運動知覚阻害のタイムウィンドウなのは間違いない.Silvanto et al. (in press, Cerebral Cortex) もそうだし.


  • Jolicœur, P., Sessa, P., Dell’Acqua, R., & Robitaille, N. (in press). On the control of visual spatial attention: Evidence from human electrophysiology. Psychological Research.

N2pcをインデックスとして,空間的注意を制御するメカニズムと中枢的な注意メカニズムの関係を調べる.
Experiment
ディストラクタは白色letter.T1は白色digit.T2は赤あるいは緑のdigit(固視点の左右3°に他方の色のディストラクタdigitと同時呈示).T2の色はSs間でカウンターバランス.100ms呈示のno ISI.Lagは2 or 8.report-T1条件とignore-T1条件(コントロール).
AB中はN2pcが惹起されない.
Discussion
空間的注意を制御するメカニズムとABを生じる中枢メカニズムは独立ではない.
・T2のidentityは求めずにT2の呈示された側を答えるコントロール課題ではわずかなcolor ABしか生じず,そもそもT2が呈示された側が分からずにN2pcが消失したわけではない.
・今回の場合,中心RSVPに関連情報が呈示されてモニタリングしないといけない場合,注意がdisengageできない可能性がある.しかし,同様のT2ディスプレイを用いた場合,toneに対するsimple RTよりもspeeded discrimination課題でN2pcが減少する (Brisson & Jolicœur, 2004) ため,注意が中央にengageしていなくてもよい.
・N2pcに引き続いて300-500msで同様のふるまいを示すターゲット対側で大きな陰性波が認められ,SPCN (sustained posterior contralateral negativity) と名付けた.SPCNでは,振幅はさほど変わらず,潜時が遅れる.SPCNはVogel and Machizawa (2004) で認められたVSTMにおける情報保持に関する対側後頭での応答を反映しているかもしれない.また,SPCNのオンセットはVSTMへの情報ロードを媒介する神経活動を反映していると推測される.ただし,SPCNは単にN2pcの続きかもしれない.
→ABの新たな電気生理学的相関としてSPCNを提唱.