• Sergent, C., Baillet, S., & Dehaene, S. (2005). Timing of the brain events underlying access to consciousness during the attentional blink. Nature Neuroscience, 8, 1391-1400.

・意識の神経相関について,刺激特異的な領域であるという主張もあれば,fronto-parietal networkだという主張もある.
・Sergent and Dehaene (2004) は,連続スケールを用いてAB中のT2視認性ははall-or-noneであることを示した.
意識的報告のbimodal分布の基盤となる神経事象を調べるのが目的
Results
・behaviorでは,AB中のT2 visibilityはbimodalパターンであり,“見える”状態と“見えない”状態のmixture.
・seen/unseenを50 % visibilityで分けてERP分析.初期のP1 (96ms),N1 (180ms) waveでは振幅,トポグラフィともに差なし.170msあたりからseenでcentral electrodeで強力なpositive wave.270msあたりでseen試行のみで左に側性化したN2 (276ms),引き続いてN3 (300ms).その後のP3a (436ms),late P3b (576ms) もseen試行のみ認められる.unseen T2の処理がストップするわけではなく,N4 (348ms) やearly P3b (480ms) は惹起される.
・P1,N1はT2 visibilityの影響を受けない.N2はvisibilityとlinearな関係.N3,P3a,P3bはvisibilityとnonlinearな関係を示し,bimodalな分布.N4はvisibilityが低いと減少するものの,抑制はされず,無意識的処理の継続を示唆.
・T2-absentでsingle/dualの差分をとってT1を処理した時とそうでない時でT1-evoked ERPを比較したところ,N2,P3a,P3bを生成・促進する.したがって,ABを生じるT1タスクの存在は,T2への意識的アクセスに関わるのと同じ処理段階に影響する.また,ABはT1-evoked P3bとT2-evoked N2の競合により生じる(T2-evoked P1, N1はT1-evoked P3a, P3bと時間的にはオーバーラップするが,ABの影響を受けないことから,パラレルに遂行される処理段階を反映).T2 visibilityでtrial-by-trial分析したところ,seen試行ではT1-evoked P3bのピークと減衰が早い.つまり,T1-evoked late P3bには変動があり,それがT1とT2の競合に影響し,時としてT2への意識的アクセスを拒む.
Discussion
・seen/unseenでERPパターンが分岐するタイミングよりも後にunseen T2によってN4が惹起されることを示した.
・Pins and Ffytche (2003) は,低コントラストグレーティングパッチを用いて,検出された時の方がP1が大きいことを示し,「P1が意識の神経相関」とした.しかし,閾値付近まで刺激をdegradeすると,P1の確率論的変動が意識的アクセスを時として妨げるのに十分だったのではないか?
・masking,neglect,AB,CBで刺激が意識的に報告できない場合でも,occipito-temporalでの処理は損なわれない.また,マカクV1でも,知覚されていない場合でも初期皮質の活動はpreserved (Super et al., 2001; Lamme et al., 2002).Lamme et al. (2002) では,マカクV1において100ms以降の第2フェイズでのみseen/unseenでV1活動に差が認められ,これはおそらく他の領域からのトップダウン入力を反映している.そのような後期の増幅 (amplification) が,fMRIのような時間解像度の低い手法を用いた場合のV1活動と意識の相関に寄与している.
・ABに関するfMRI (Marois et al., 2004; Kranczioch et al., 2005; Feinstein et al., 2004) やMEG (Gross et al., 2004) 研究では,anterior cingulate,lateral prefrontal,parietalが見えた試行でより賦活が大きい.Gross et al. (2004) では,今回認められたP3a,P3bあたりのタイムウィンドウで,frontal,parietal,cingulate,anterior temporalにまたがってβ帯域でのsynchronizationが認められ,このsynchronizationはAB中には低下する.binocular rivalry (Lumer et al., 1998),IB (Rees et al., 1999),CB (Beck et al., 2001),masking (Dehaene et al., 2001) においても,意識的知覚にはPFC,parietal,ACCの協調的活動が必要.
・‘global neuronal workspace’モデル (Dehaene et al., 1998):閾上刺激は上述の領域を含むワークスペースをmobilizeし,視覚野の刺激符号プロセッサに増幅信号を送る.今回のP3bもおそらくトップダウンの増幅信号を反映している.
・N2やN4の漸進的変化はターゲット視認性の漸進的変化を説明するかもしれないが,この知覚が意識的報告に利用できるかどうかはbimodalな波形 (N3,P3a,P3b) を最適にトリガーできるかどうかにかかっている.
・今回の問題点は,‘seen’がいったいどういう状態を指しているのかが不明(detectionからidentificationまで含む)ということである.ただし,seen/unseenの二分法とcategorizationの相関は高いから大丈夫.
<コメント>
徹底的にされていて凄いなぁと思った.ABが生じる時にはT1のconsolidationが遅れている(あくまでstochasticに)というデータは美しい.Change detectionの可否もchange前のERPコンポーネントで予測できるってな内容の論文があったはず.


  • Akyürek, E. G., & Hommel, B. (2005). Short-term memory and the attentional blink: Capacity versus content. Memory & Cognition, 33, 654-663.

・ABの説明としては,STMへの固定化がボトルネックとするconsolidationモデル (Chun & Potter, 1995; Jolicœur, Dell’Acqua, & Crebolder, 2000) とSTM内のターゲット候補アイテム間の干渉がボトルネックとするinterferenceモデル (Duncan, Ward, & Shapiro, 1994; Shapiro & Raymond, 1994) がある.
RSVPタスク(特にAB)が,同時遂行するSTM loadあるいはそのcontentによる影響を受けるかどうかを調べる.
Experiment 1-3
・STM loadが高い(覚えておくアイテム数が多い)ほど全体的なT2パフォーマンスが低い.
・STM contentによるT2パフォーマンスへの影響もある.
しかし,load×lagあるいはcontent×lagの交互作用はExp1-3を通じて有意ではない.
・ちなみにExp3で構音抑制かけてもlag絡みの交互作用が有意ではないため,STMタスクとABタスクでvisual/verbalというようにコーディング方法が異なるためにSTM loadがABに影響しないわけではない.
General Discussion
AB自体はconsolidationモデルが唱えるように時間的容量の問題(STMへの転送の容量限界)に起因するが,RSVP全体のパフォーマンスはinterferenceモデルが唱えるようにSTM内の他のアイテムとの競合による影響を受け,競合アイテムがタスクに関連するほど干渉も大きい.
<コメント>
「VWM内での情報のmaintenanceはVWMへのconsolidationの速度を遅くすることはない」という旨の論文 (Woodman & Vogel, 2005, Psychol Sci) を考えれば納得か?