• Silvanto, J., Muggleton, N. G., Cowey, A., & Walsh, V. (2007). Neural adaptation reveals state-dependent effects of transcranial magnetic stimulation. European Journal of Neuroscience, 25, 1874-1881.

今日の研究会で紹介した論文.最近読んだものの中では,もっとも感銘を受けた.たとえば緑色ディスプレイに順応した後は赤色の補色残像が見えるが,そこでV1にTMSを入れてphospheneを誘導してやると,緑色(順応刺激と同じ色)のphospheneが生じる(実験1).ちなみに補色残像が主観的には消失した後でも色つきphospheneはしばらくの間は誘導されるため,対比ではない.つまり,どういうことかというと,順応によって活動が低下しているニューロン集団の方がTMSによって無理矢理活動させられる幅が相対的に大きい,ということらしい.実験2では,閾下TMS,さらにマッカロー効果の亜種みたいなのを用いて,順応した特徴をコーディングするニューロンの方がTMSによって促進されるかを調べている(実験1の知見を閾上から閾下,色から色×方位に一般化ということ).
結論としては,TMSが関連活動にランダムノイズを与える(SN比を低下させる)から行動パフォーマンスが低下するとはよく言われるが,ターゲット関連活動が抑制されるからかノイズ活動が増大するからかはたまた両方か不明だけども,実のところはターゲット関連活動よりもノイズ活動が相対的に増加しやすいのでSN比が低下するんですよ,ということらしい.ま,当たり前と言ってしまえば当たり前なんでしょうが,わたしにとっては非常に勉強になりました.
(もちろんlow-frequency repetitive TMSなんかは機序が違うのでしょうが)