• Melcher, D. (2007). Predictive remapping of visual features precedes saccadic eye movements. Nature Neuroscience, 10, 903-907.

TAE (tilt aftereffect) が現在のfixationから将来のfixationへとサッカードの実行前から移動するというお話.こういった視覚処理のリマッピングがサッカード間の知覚のスムーズな移行を支えているのでしょうということらしい.
先日の研究会で発表したのだが,読んでもよくわかっていなかったけれども,発表して議論していくうちにだんだんと内容の理解も深まっていった.
サッカードに先行して注意がシフトするという話(たとえば Godijn & Pratt (2002). Endogenous saccades are preceded by shifts of visual attention: Evidence from cross-saccadic priming effects. Acta Psychologica, 110, 83-102. とか Peterson, Kramer, & Irwin (2004). Covert shifts of attention precede involuntary eye movements. Perception & Psychophysics, 66, 398-405.)を考えると,受容野のシフトがすなわち注意のシフトなんだろうか?注意がシフトする結果として受容野がシフトするのかもしれないが,それだと「注意って何だよ?」ということになるが,(古典的?)受容野のシフトがすなわち注意(の焦点)のシフトというのなら話は単純でよいかもしれない(あ,もちろん完全に受容野イコール注意とは思いませんが…).ちなみにMelcher (2007) は注意シフトだけでは受容野シフトには不十分であり,眼球運動が必要であることを示す押さえの実験を行っているが,この実験パラダイムはなんだかだまされている感じがして(サッカードターゲットとは異なる位置に出るサッカードキューが突然オンセットするから注意を捕捉しているはずだと仮定しているが,実際に注意を捕捉しているかどうかは分からない),実のところは「後に眼球がついてくる」注意シフトが受容野シフトと関係しているのではないだろうか.研究会でみなさんと議論している中でこういう考えに至ったことを記しておきます.