最近ちょこっと読んでたりしたのも,ずっとここに書くのが面倒くさくてね.今日は少し書く気が起こったもので.


  • Davenport, J. L., & Potter, M. C. (2005). The locus of semantic priming in RSVP target search. Memory & Cognition, 33, 241-248.

・超高速RSVPでも意味プライミングが生じるのか,またどの処理段階で生じるのか?
・Potter et al. (2002) が報告したように,53ms-RSVPで非常に短いSOA (53ms) では逆ABが生じる(T2の方がT1よりも報告されやすい).このような短いSOAではStage1で競合が生じているという2-stage competitionモデルの枠組内で意味プライミングの生起段階を特定する.
Experiment1
上下2ストリーム.SOAは53/213ms.プライム語が最初に呈示され,T1あるいはT2の一方と意味的に関連,または両者とも関連なし.
→短いSOAでPotter et al. (2002) と同様のcrossoverを確認.T1/T2,SOAに関わらずprimed条件ではunprimed条件に比して正答率高い.unprimed条件ではneither primed条件に比べてコストがあるわけではない.
※unprimed条件のコストがないので,処理初期段階の注意配分に影響するのではなく,Stage1終了時のlexical identificationあるいはそれ以降で影響している.
Experiment2
別被験者グループで,controlled processingがプライミングを促進するかどうか調べる.意味的に関連するターゲットのみを答えさせた.
→実験1と実験2のprimed条件を比較しても有意差はない.
※プライミングは自動的であって,制御できるものではない.
General Discussion
・unprimed条件のコストがないので,Stage1においてStage2到達までT1/T2が並列にhorse raceするんじゃなくて,T2オンセット時にattentionがスイッチするかどうかはall-or-noneなんだろう.
※意味プライミングはlexical access時のbenefitを生じる(実験2より選択的に検索してもbenefitが生じないため,検索時の手がかりとして作用している可能性は低い).
<コメント>
実験2では意味的に関連するターゲットしか答えさせないので,unprimed条件とはneither-primed条件は存在しないわけで,ベースラインとなる条件がないので実験1と比較するのも何だかなぁという気もする.でも,1個だけ報告したらいいだけなのにパフォーマンスが向上しないという意味では良いのかもしれない.とはいっても,意味的に関連するものだけを選択するところのコストだってあるかもしれんよね.


  • Potter, M. C., Dell’Acqua, R., Pesciarelli, F., Job, R., Peressotti, F., & O’Connor, D. H. (2005). Bidirectional semantic priming in the attentional blink. Psychonomic Bulletin & Review, 12, 460-465.

・最初に同定されたターゲットが他方へのプライムとして作用するなら,2-stage competitionモデル (Potter et al., 2002) では短SOAではT2がT1をプライムすると予測.
Experiment1
53ms呈示の上下2ストリームのRSVPSOAは27/53/107/213ms(27ms時は27ms重複して呈示).T1/T2が関連するrelated条件と無関連なunrelated条件.
→T2→T1プライミングSOA = 27ms,T1→T2プライミングSOAに関わらず一定.
※forward associationほどプライミングが強力と予想されるが,順序の効果はなく,今回のプライミングは一方から他方への活性化拡散ではなく,2単語の意味的オーバーラップに起因する.
Experiment2
イタリア語でイタリア人被験者に同様の実験を実施.50ms呈示の上下2ストリームのRSVPSOAは0/50/100/200ms.
SOA = 0では両方向のプライミング(当たり前).T2→T1プライミングSOA = 50ms,T1→T2プライミングSOA = 100, 200ms.
General Discussion
・Davenport and Potter (2005) のように,プライミングはStage2に先だって単語同定を促進したのだろう.
・AB中はWM consolidationを反映するP3が抑制され (Dell’Acqua et al., 2003; Vogel et al., 1998),T2→T1プライミングが全てのSOAで観察されたわけではないことから,WMからの検索段階でプライミングが作用している可能性は棄却される.
※プライミングは最初に同定されたアイテムから他方へと,機能的には一方向的.
<コメント>
この逆向プライミングは使えると思って,ちょっと考えてるんだけど,どうかね?


  • Bachmann, T., Luiga, I., & Põder, E. (2005). Variations in backward masking with different masking stimuli: II. The effects of spatially quantized masks in the light of local contour interaction, interchannel inhibition, perceptual retouch, and substitution theories. Perception, 34, 139-154.

ターゲットは顔.マスクはsame-face,different-face,noiseで,quantisationを施してある.quantisationの程度も操作.あとSOAと.
・quantisationが細かくなると,same-faceマスクではマスキング減少,different-faceマスクではマスキング増大,noiseマスクではマスキング効果変わらず.
→noiseマスクでは空間周波数に関わらずマスキング量変わらないので,inter-channel inhibition説に不一致.different-faceマスクでは細かくなるほど顔の違いがわかりやすくattentionをcaptureしやすくなるからマスキングが増加する.
SOAが増加すると,same-faceマスクではマスキング増大,noiseマスクではマスキング減少,different-faceマスクではnoiseマスクほどに回復しない.
→noiseマスクとdifferent-faceマスクは短SOAでは差がないのに,長SOAではnoiseマスクのみ回復することから,short-SOAにおける局所的相互作用からlong-SOAでの注意効果へのhand-over.
<コメント>
またBachmannを読んでしまいました.議論とかもう意味不明.とりあえずは,どの説も単独じゃダメよということらしい.相変わらずDi Lolloを叩きたいらしい.substitution説では不十分だというのはわかるが,それと同様にBachmann自身のattentional switch説やperceptual retouch説もダメなところがあると思うけどね.


  • Dux, P. E., Coltheart, V., & Harris, I. M. (in press). On the fate of distractor stimuli in rapid serial visual presentation. Cognition.(以前研究会で紹介してもらった論文)

AB事態でディストラクタの処理がどのようになってるかに関心.T1−1アイテムとT1+1アイテムが繰り返されるrepeat条件と異なるnon-repeat条件.
→5つの実験を通じて…
・repeat条件の方がnon-repeat条件に比べて短いLagでパフォーマンス向上(AB減少).
・大文字と小文字で繰り返してもrepeat効果はないので,abstract identityレベルではなく,featureレベルで生じる.
※T2をディストラクタ(T1−1アイテム)と同じカテゴリ (alphabet or digit) にすると,repeat効果は消失.
General Discussion
・T1−1アイテムがディストラクタとして抑制されるならば,T1+1アイテムに同じアイテムが出現すれば抑制されるので,T1への逆向マスキングが弱くなり,結果としてABが減弱するというロジック.
・featureレベルの低次の効果と,カテゴリを異にするディストラクタに特異的な高次の効果があるんじゃないか?
<コメント>
なにゆえinhibitionと言わねばならぬのかというような議論になったような気が.まずはLoach and Marì-Beffa (2003) を踏襲しているからでしょう.それに,今回はターゲットとディストラクタが同じカテゴリならば効果がないことを示したことによって,単なるadaptationみたいな話ではなく,active inhibitionである可能性を示した点でLoachらの研究の上を行っている部分もあるかと.
色でのフィルタリングは,カテゴリ情報(あるいは意味情報)をカットできないんだねぇ.ま,色ストループなんかからすれば当たり前か.
それにしてもT1−1を操作する理由が特に書いてあったわけでもなく,唐突なのがびっくり.というかディストラクタを抑制していることを知りたかったらABじゃなくていいじゃんかよ.