Psychol Sci最新号より

  • Lee, H., & Vecera, S. P. (2005). Visual cognition influences early vision: The role of visual short-term memory in amodal completion. Psychological Science, 16, 763-768.

・amodal completionは,被験者の知識や経験による影響を受けず (Kanizsa & Gerbino, 1982),刺激特徴に決定されると考えられている.
・Pratt and Sekuler (2001) は,たとえoccluderが出現する前に4つの別個のオブジェクトとしてプレビューしても,object-based attention効果 (Egly et al., 1994) をインデックスとするamodal completionが認められることから,T-junctionにトリガーされるamodal completionが先行知識をoverrideするとした.
VSTMやタスク関連目標などといった高次視覚プロセスがamodal completionに関与する可能性がある
Experiment1
4つの別個のオブジェクトとしてプレビュー (1000ms).4つのオブジェクトにそれぞれ1つずつ呈示される4つの色パッチを記憶しておくload条件と無視するno-load条件.色パッチの位置は後のoccluderによって遮蔽される位置(4つのオブジェクトの中心側).Occluderによる遮蔽 (500ms) の後,cueが50ms呈示され,直後に4ヶ所に3つの小さなアイテム(円or正方形)と1つの大きなアイテム(円or正方形)が50ms呈示される.大きなアイテムがターゲットなので,ターゲットの形状をspeeded response(responseがあるまでrectangleとoccluderは呈示し続ける).Load条件ではその後にメモリテスト.
→load条件ではobject-based attention効果(invalid-sameがinvalid-differentよりも有意にRT速い)が消失.
・オブジェクトの一部をVSTM内に符号化してactiveに維持していると,オブジェクトに関する先行知識がamodal completionに影響しうる.
※4つの別個のオブジェクト上に呈示されていた色パッチを記憶していると,視覚系がamodal completionによる2つのオブジェクトとしての再解釈をすることができない,あるいは再解釈に時間を要する.
・VSTM負荷はamodal completionではなく,単にobject-based attentionに干渉したのかもしれない(つまり,amodal completionは生じていたかもしれないけれども,それを取り出してくるためのobject-based attentionに干渉しただけかもしれない).→Exp2へ
Experiment2
プレビュー時の4つのオブジェクトをつないで,もとから2つのオブジェクトにした点を除き,Exp1と一緒.つまり,2つのオブジェクト上にそれぞれ2つずつ色パッチが呈示されている(色パッチの位置はExp1と同じく,後に呈示されるoccluderに遮蔽される場所).
→load条件でもobject-based attention効果を確認.
・VSTM負荷はExp1においてobject-based attention効果を全般的に阻害したわけではなく,amodal completionに影響した.
・Exp1では色パッチが中心側に4つ近接して呈示されており,occluder出現時にcompleteすべきcollinear segmentsに注意が向くのが遅れただけかもしれない.→Exp3へ
Experiment3
プレビュー時の4つのオブジェクト上の色パッチ呈示位置を周辺側に変更した点を除き,Exp1と同じ.
→load条件ではobject-based attention効果が消失.
・Exp1におけるamodal completionのreductionは,色パッチの位置に基づいた注意方略に起因するものではない.
General Discussion
・amodal completionはT-junctionのようなイメージ情報に基づくというimplicitあるいはexplicitな前提があるが,VSTMのような高次視覚プロセスがamodal completionに関与することを立証した.
※もちろんイメージベースの特徴は重要であるが,VSTM内の情報がイメージベースの手がかりにoverrideする.
・先行経験によるcompletionを生じる新たな知覚的グループが形成されることは知られていた (Zemel et al.,2002) が,今回は進行中の認知プロセスがcompletionに影響し,かつoverrideすることを初めて示した.
・object-based attention課題は空間的注意に依存しており,空間的記憶負荷は空間的注意に影響する (Woodman & Luck, 2004) ことから,空間負荷はobject-based attentionを全般的に損なうだろう.したがって,位置の記憶もcompletionに影響するかもしれないが,それを測定するためには新たなmeasureが必要.
※Pratt and Sekuler (2001) で高次プロセスの影響が認められなかった理由は?
 →VSTM容量は小さいので,amodal completionによって記憶貯蔵要求を減らしている (“memory economy”).4つのオブジェクトを記憶しなければならない場合,“memory economy” は生じず,2つのオブジェクトへのcompletionが阻害される.
・modal completionやperceptual organizationでも同様の “memory economy” が当てはまる.
<コメント>
なんか騙された感じ.amodal completionにVSTMが必要で,VSTMを記憶課題で満たしてやることでamodal completionが生じなくなるという内容では決してない.なぜなら,Exp2ではVSTMに負荷をかけてもobject-based attention効果が消失しないから.あくまで,単にVSTM課題でプレビューした4つのオブジェクトをバラバラに維持させておくことで,2つのオブジェクトへのamodal completionを阻害できるという程度のお話として理解しましたが?
ただ,いくつか疑問は湧く.
・4つのオブジェクト上にそれぞれ1つずつ呈示された色パッチを記憶することで,4つのrectangleを別個のオブジェクトとして維持し続けることになるというのが不思議.ま,ある特徴でオブジェクトを選択すればその他の特徴にまでアクセスするという話を考えれば納得できるような気もするが….
・実はamodal completionにVSTMが必要なのかもしれない.VSTMを一杯にした状態で,プレビューなしにいきなりoccluderで遮蔽された2本のバーを呈示してobject-based attentionタスクをかけない限りは分からないけど.Exp2でVSTMに負荷をかけてもobject-baed attention効果が生じるのは,実はamodal completionしてないんだけど,プレビュー時に2つの完全な長方形オブジェクトを見ているからかもしれない.でも,それだと4つの色パッチでVSTMが一杯なんだから,amodal completionにVSTMが必要という可能性に矛盾する.もしかすると,2つのオブジェクトに2つずつ色パッチが張り付いている場合,計4つの色パッチを記憶してもオブジェクトとしては2つだからVSTMが満たされていないのかもしれない(Luck & Vogel, 1997的なオブジェクト単位で4つという話ならばあり得る).amodal completion=object-based attention効果ではないため,object-based attention効果の有無が直接的にamodal completionの有無に対応するわけではないので話がこんがらがる.
実はLeeたちはこんなことまで分かって書いてるのかもしれない.『amodal completionにVSTMがparticipate inする』という記述が何を意味しているのかによる.


  • Dux, P. E., & Coltheart, V. (2005). The meaning of the mask matters: Evidence of conceptual interference in the attentional blink. Psychological Science, 16, 775-779.

・ABの生起因として,概念的干渉が重要であるとする立場 (Chun & Potter, 1995; Isaak et al., 1999) と低次の特徴干渉が重要であるとする立場 (Giesbrecht et al., 2003, 2004; Grandison et al., 1997; Maki et al., 2003; McAuliffe & Knowlton, 2000; Seiffert et al., 1997) がある.
先行研究の問題点は,概念的類似度を操作する際に,特徴的類似度を一定に保っていなかったことである.
→全く同一のディストラクタを教示によって,ターゲットと同じカテゴリーに知覚されるか,異なるカテゴリーに知覚されるかを決定する (Jonides & Gleitman, 1972).
Experiment
黒色背景.T1は緑色letter.T2は赤色letter.ディストラクタは白色letter/digit.スケルトパラダイム(+T2マスクの後にさらに&マスク).ディストラクタカテゴリ(ブロック間で操作)がletter/digit.ディストラクタ曖昧性(ブロック内で操作)がambiguous/unambiguous.Lag(ブロック内で操作)が200/400/600/800ms.Digifaceフォントを使用しているため,ambiguous-letterではO/Sなのが,ambiguous-digitでは0/5.
ambiguous/unambiguousに関わらず,ABはディストラクタがletterである場合に大きい.
・digit試行では,ディストラクタがambiguousである場合よりもunambiguousである場合にABが減少.
Discussion
ambiguous-digitとambiguous-letterで刺激は全く同一であるため,ターゲットとディストラクタのカテゴリー差がAB減少を生じている.
低次マスキングがABに果たす役割については否定しないが,低次干渉と高次干渉が相互作用してABを生じていると提案する.
・unambiguous試行のdigit-letterの差は概念+特徴であり32.4 % のABが認められた一方で,ambiguous試行のdigit-letterの差は概念のみであり19.4 % のABが認められたことから,概念的な差の方がABに大きく寄与する.
・digit試行でambiguousな方がABが大きい理由は,ambiguous-digitの方がletterとの特徴差がないために特徴レベルでより干渉したことと,ambiguous-digit (0/5) によって数試行においてO/Sという文字表象が活性化したことの両方が組み合わさったためであると考えられる.
<コメント>
digitではambiguous/unambiguousに差がなくて,letterになると落ち幅が異なるというパターンではなくて,letterではambiguous/anambiguousに差がなくて,digitになると回復幅が異なるというパターン.つまり,ambiguousな場合はletterとして処理するのがデフォルトになってるということか.だからDiscussionのところのambiguous-digitで文字表象が活性化しているというのは納得で,そうなるとambiguous-digitがletterとして干渉していることから,19.4 % の概念干渉は少なく見積もられていて,実際にはもっと概念干渉は大きいのかもしれない.
ambiguous-digitがletterとして処理されうるというのは,ターゲットがletterであるという文脈のせいなのだろう.つまり,ターゲットをdigitにすれば,全く逆にambiguous-letterは時としてdigitとして処理されうることになるんだろう.