• Jordan, H., & Tipper, S. P. (1998). Object-based inhibition of return in static displays. Psychonomic Bulletin & Review, 5, 504-509.

・IORは環境座標 (Maylor, 1985; Posner & Cohen, 1984) だけではなく,オブジェクト中心座標 (Tipper et al., 1991) でも生じる.
・Müller and von Mühlenen (1996) は,Tipperグループの手法ではobject-based IORを追試できるが,彼ら自身の手法ではobject-based IORが生じないことから,「object-based IORは脆弱な現象である」と批判.しかし,Tipper et al. (1994) はIORがlocationとobjectの二つの参照枠において生じることを示しており,cued locationでIORが見かけ上大きいのはlocation-basedとobject-basedの加算であるためだと考えられる.実際に,何もオブジェクトが存在しないlocationに注意が向けられてもIORは小さい (Wright & Richard, 1996).
→object-based IORはmovingディスプレイを用いてしか示されていないため,staticディスプレイを用いてobject-based IORを示す.その目的のためにKanizsa squareを用いる.
Experiment:Kanizsa squareにcueが呈示された場合の方が,IORが大きくなるであろう.
※予測通り,cued regionが見かけ上のオブジェクト (Kanizsa square) に占有されている場合の方がIORが大きい.
・(1) オブジェクト上にターゲットが呈示されると検出しにくいためにIORが大きくなった可能性,(2) cued-objectの抑制とuncued-objectの促進の組み合わせである可能性,(3) cueの検出が見かけ上のオブジェクトの存在によって促進され,引き続く抑制が強力になった可能性,は否定.特に,(3) については,cue検出タスクで追加実験すると,cue呈示位置が見かけ上のオブジェクト上でもそうでなくてもRTに有意差なし.
Discussion
・location-basedとobject-basedの両方でneglectが生じる (Humphreys & Riddoch, 1994, 1995) という知見は,注意メカニズムが複数の参照枠にアクセス可能であることを示している.
※皮肉なことに,cued objectが動かない時の大きなIORというのは,location-basedフレームとobject-basedフレームが加算されるからである.